狐の会『秋の夢』

yamamototakamasa2008-10-10


今日は狐の会の『秋の夢』のPVをアップしよう。ジョナス・メカスのような映像がいい感じ。スナップのふりをした嘘。ドキュメントのふりをしたフィクション。ゆらめき、立ち上がる真実。


自分たちで公表したのか、してないのか、聞かなかったので知らないけど、彼らは解散した。


いつでもファースト・アルバムをリリースできるように曲はできていたけど、結局は世に出すことなく、ここで彼らの抵抗も一旦休止というわけだ。


彼らがリリースしたのは、3枚の短編小説付きマキシシングル。『抵抗と笑いとその後にくる虚しさ』。『秋の夢』。『暇つぶしの星のお姫様』。ファースト・マキシのレコーディングでエンジニアの不興を買い出入り禁止のようなことになったので、セカンドとサードは事情を話してmoose hillこと伊藤ゴローさんに、自宅レコーディングをしてもらった。


僕がギターポップ(シーン?)を嫌になった理由はいろいろとあるんだけど、生意気で、若くて、青二才で、へたくそで、理想主義で、誇り高くて、攻撃的で、美しさを求める音楽をやろうとしている若者と出会ったら、かつてネオアコースティックと呼ばれた音楽をリリースしたいと思っていた。


ネオアコースティック復興。


ある日、彼らから届いた短編小説付きCD『抵抗と笑いとその後にくる虚しさ』を聴いて、すぐにリリースすることを決めた。


小説や映画が好きなことを伺わせる、登場人物、舞台設定、ストーリーがしっかりと構築された歌があった。が、そういったことは、あくまでも形式の選択。彼らの歌の背後には、僕が望んでいたものがあったのだ。それは、青臭い言い方をすれば「抵抗」のスピリット。


でも、ここにあるのは簡単にひねり潰されるくらい脆弱で稚拙な「抵抗」。早熟故の未熟。彼らの、まず初戦は負けることが運命づけられている類のフィジカルの弱さも、頭でっかちなところも、ある意味、王道というか、由緒正しかった(笑)。そして、この手の若者たちは、ノーミスで連勝していかないといけないゲームにはむいていない。


このブログを書く直前にNHKチャットモンチーの特番をやっていたけど、彼女たちのように心を鬼にして勝ち続けるのは、彼らには無理な注文だろう。


でも僕は、こういう「青二才」ぶりがパンクだと思っているからね。誤解を恐れずに言うならば。


早熟な「青二才」と、才気ばしっていてタフな女の子たち。果たして、10年後はどうなっているのだろう。


僕は彼らに出会えて良かったと思っているし、彼らの音楽をリリースできて良かったと思っている。


先日、ボーカルでソングライターだった狐に会った。珍しく「今までありがとうございました」みたいなことを言っていた。そして、別れ際に最近書いたという小説をくれた。出版社で働き始めたらしい。


狐の会『秋の夢』