なまいきシャルロット

yamamototakamasa2007-08-07

2007年8月7日


レーベルを始めた頃にある女の子でレコーディングしようと思ったことがあった。「あった」ということは結局実現しなかったということなのだが、その女の子でもって、体中の毛穴から空気が漏れているような隠微でロリータで、牡丹灯篭の幽霊のように男の生気を吸い取っていくような声を録りたかったのだ。


少女時代のシャルロット・ゲンズブールが父セルジュのプロデュースでリリースした『魅少女・シャルロット』(Lemon incest 1986年)。この盤に刻まれた、文字通り体中の毛穴から空気とともに「いけないもの」が漏れているような声が脳裏と下半身に焼きついていたから。


きっと渋谷系に覚えのある人は知っている作品だと思う。いろんな「なんちゃってシャルロット」はいたのだろう。(聴いてません。だから知りません)。カヒミ・カリイは近いところまでいっているのかなという評価なのだろうけど、今も昔も聴いてないので判断はしません。


厳密に言うと「体中の毛穴から空気が漏れるような声」というよりは、ともに漏れる「いけないもの」を聴きたいのだ。そして、音にしたいのだ。


このシャルロットの盤が心にこびりついたのは、父セルジュとの濃密な関係性が刻み込まれていたから。サラブレットの血筋を持ち少女時代から父に「いけないこと」を時限爆弾のようにセットされたシャルロット。この盤に刻まれている隠微さを年端もゆかぬ実の娘を使って表現する父も父だが、そのシャルロットはきっと全てを理解していたはず。こういう少女はなにもかも知っているはずだからね。この怖い感じがゾクゾクと。そしてそのことを偉大な父も知っていたはず。


ここで言う「いけないもの」とは好きな男、あるいは自分を好きになった男の生気を吸い取ってしまいそうな女の業のこと。それこそ、牡丹灯篭の侍のようになるかもしれないけど、こういう娘と出会って、その業を声として録音したいと思ったりする。いつかは。出会えること自体が危険ではあるのだが。「体中かの毛穴から空気が漏れているような声」というのは、単純に僕の好みの問題。


でもって、この盤で連想するのは、荻野目慶子とか、『高校教師』の桜井幸子峰岸徹とか、そんなのばっか。男を破滅させる女。一言で言うと。でも、それは幸せな破滅の匂いが。。。


ちなみに濃ゆい部分を抜いて当時のシャルロットのかわいさだけに注目すると、そこから連想するのはエリック・ロメールの『海辺のポーリーヌ』かな。(1983年/フランス/監督・脚本:エリック・ロメール 出演:アマンダ・ラングレ/アリエル・ドンバール)。こっちは隠微とか怖さではなくて、無自覚な少女のパンチラといったところ。だからかわいさだけは匹敵と言っておこう。
 

ちなみに去年シャルロットがairらとともに制作したレコードには興味がありません。英語で歌っているのは、父や少女時代の自分がプレッシャーなんだろうなとわかったので。もっといい女性になれる少女だったのに。このままでは、奇跡の配合から生まれたサラブレッドがGIで勝てないまま引退しそう。こういう女の子は立派に怖い女性に成長するはずなんだけどなあ。なので、そういう意味でシャルロットは僕にとって謎というか「?」。一過性の少女性だったのかな。まあ、実生活ではそうほうがいいだろうから文句は言わないけど。


などなど。さて、写真家は目の前にいるライオンが口を開けて自分に噛み付こうとしている時、逃げるのでしょうか?それともシャッターを押すのでしょうか?

Charlotte forever」