友野祐介『プライスタグ』


数年前に京都からひとりの青年がCoaの事務所を訪ねてきてくれた。完成した自主映画が東京でロードショーされることになったので、公開日にあわせて東京にやってきたのだという。『夢のほとり』という作品DVDを手渡してくれた。そして2作目の製作の目処がたったので、京都に帰ったら準備にかかると言っていた。


彼のメインの用件は残像カフェのPVを撮らせてほしいということだった。ちょうどその頃の残像カフェはバンドのコンディションが良くない時期だったので、あまりそういった姿を人に見せたくなく、彼の熱意にもかかわらず何か別の理由をつけて断ってしまった。


来週は仕事がひと段落するので、平日の昼間からのんびり映画でも見に行こうかなと近場の映画館のホームページをだらだらと眺めていたら、ポレポレ東中野のホームページで彼の名前を見つけた。どうやら、その時言っていた2作目が完成したらしい。


長編映画を自分で作るなんて、大変だろうと思う。きっとこっちが想像する大変さをはるかに超えた大変さがあるんだろう。『夢のほとり』を観た時も、エンドロールにクレジットされた人間やお店、場所の名前の多さに、「うわっ」とその大変さを想像して気が遠くなった。


でも、作るんだろうな。そういう問題じゃないからね。


残像カフェのPVは、良くないコンディションのバンドを彼の目線で撮ってもらうドキュメントがきっと正解だったのだろう。


最近は景気の悪い話や愚痴をたくさん聞かされて「やれやれ」ということが多いけど、こういう未来がある話はいい。


先日、あるレコード店に営業に行った際に、お店の人に「メンバーは全員10代らしいよ。母親はレインコーツらしいよ」と聴かされたキティー・デイジー&ルイスを知ったときにも、そう思った。事務所に戻ってあらためて聴いてみたらやはり、フェイクな50'sミュージックも、ヤングウルフな面構えも最高だった。


結局、やる奴はやるんだから。手持ちのカードが少なかろうが。



『プライスタグ』は10月17日まで、ポレポレ東中野で公開。各日16時10分から1回上映。観に行ってみよう。


ポレポレ東中野
http://www.mmjp.or.jp/pole2/

『プライスタグ』公式ホームページ
http://homepage1.nifty.com/tollywood/ppp/pricetag/